結婚式で想う事

友人の息子さんのある結婚式に招かれた。恋愛して結婚、子供を産み、育て、無難かつ平凡な人生を送って貰いたいと我が子には思うのだが、振り返って自分自身のことを思い出すと、あまりに偉そうなことを言えないし気が引ける。そんなことをぼんやり考えながら手元にある辞書で恋愛と引く。そこには「特定の異性に特別の愛情を抱き愛し合うこと。更に二人だけでずっと一緒にいたい、出来うるなら合体したいという気持ちを持ちながらそれが常にかなえられない。(まれにかなえられて歓喜することもある)でひどく心を苦しめる状態を言う」とあった。
最近の若い人達はさっさと合体ばかり済ませてしまって、この辞書にあるように悩んだり苦しんだりするのだろうか、などと思い過ごした。
この時、両家の親族が初めて見る新郎新婦に対してどの様なことを思い考えているのだろうかと勝手に独断と偏見に基づいて予想してみた。つまり、親族の腹の中を探るのである。新婦側の親族から新郎を見て、まず父親はよくも大事な娘を盗んだなという気持ちがありありと顔に出ていて、こうなった上は必ず幸福にせよという、不安と期待で一杯であるということが予想された。
又、新郎の外見はよさそうだが、見てくれだけの男ではないだろうか、中身もしっかりしていて、甲斐性もあるか、人生真面目に生きる奴か、浮気などして女房を泣かすのではないか、どのくらい偉くなるか、など思っているのだろう。
次に新郎側の親族から新婦を見て、よく気が利いて妻としてうまくやってくれるだろうか、物事をきちんとこなして、子供も数人産んで夫を支えきちんと家庭を守ってくれるだろうか。銜えタバコで片足を組み、パチンコなどやらないよね、などである。
親戚の中には口うるさいおばさんの一人や二人いるもんだ。こういう人達とうまく付き合ってくれるかな、などである。
一方、当事者の二人は自信満々悠々としていて、知ってか知らずかニコニコ笑って何の罪もないのだ。両家の親族は内心はこの様にしていろいろ心配しているのだが、本日の披露宴にて大丈夫というお墨付きを得たいのだと思われる。
結婚は二人にとって国と国とに例えるなら、安全保障条約と相互不可侵条約の締結みたいなものだ。お互いの安全を保障するということは、敵が攻めてきたら自分の命を掛けても相手を守らなくてはならないのだ。もうひとつの不可侵条約は、二人の内面的から精神的なものだ。夫婦と言えども個人の主義主張、イデオロギー、趣味、人生観などは尊重されなければならない。精神的面での干渉は相互にさけることだ。よく二人の価値観が同じだから一緒になるなどという人達がいるが、二人の人間が全く同じ価値観など持てるわけはなく、ましてや全く別々の環境で育った二人が一緒に暮らすのだから、価値観が異なる方が当然だ。この個人の価値観の違う処を相互に立ち入らないことが大切だ。相手の友人が同姓異性にかかわらず大切にしたい。又、選挙のときに投票を強制したりしないことだ。主義主張思想も認め合うことだ。
相互に立ち入らないところを残しておくことや、ちょっと変わった意見もいきなり拒絶したり馬鹿にしたりしないで、よくよく吟味してみよう。
しかし、そうは言っても毎日の生活を送っていくには、谷あり山ありなのだ。
特に人間、谷の時は弱いものだ。谷とは、人間関係のいきづまり、金銭関係、ケガ、死亡などだが、人間困難にぶつかるととりえず手近にいる者にあたりたくなるものだ。
原因を持って行きたがるものだ。感情的になればなるほどエキサイト、エスカレートしてくる。良い結果は生まれない。そこで人間はある道具を使ってこれらの困難を乗り越えなくてはならない。道具と言っても、トンカチやノコギリではない。それは我慢という道具だ。耐える、辛抱すると言い換えても良い。
人間の感情を抑えるための我慢という道具は、口で言うほど易しくない。この我慢は自分を養育するしかない。この我慢を養育するには、知力、知性が必要だ。これがないと感情は抑えられないことが多い。物事の発生原因を論理的に考え、またその対応も同じように論理的に考える癖をつけるのが知性や知力だ。これらを育てるのは本をよく読むとか、目上の人の意見を良く聞くとかにて養うしかないだろう。
”金持ち喧嘩せず”という諺がある。金持ちはどういうわけか知力や知性のある人が多い。多分頭が良いので金持ちになったのだろう。だが金持ち同士は時には喧嘩をする。
但し、お金について言えば、金持ち同士は金が入って来てからもめたりするが、喧嘩に負けても多少は実入りがある。これが金持ちの知恵。
ところが、貧乏人同士の喧嘩は金が入ってくる前に喧嘩をしてしまうのだ。
だから金のほうでさっさと逃げてしまうのだ。つまり感情的になって、気が済むまで相手を罵ったり、暴力に訴えれば後味は悪いし、結果は大損だということを論理立てて考える癖をつけることだと思う。
ヨーロッパなど先進国は、二十世紀世界で二回の大戦争を繰り返し、この経験から学び、もう争いはしない。アフリカ、南米、ボスニアなど後進国は現在も争いが絶えない。貧しい者ほど争い、ますます貧しくなっていく。人間争わないことだ。
こんなことを考えているうちに結婚式は終わった。