I・ダイキチ君50才。長らく営林署の下請けにて山を歩いている超ベテラン。
彼の息覚と視覚が人間離れをしている。
風向きによって熊の居所が判るらしく、枯枝を踏みつけ時の音や熊独特の息いで一定の距離に熊がいると判ると言う。そういう時熊が人間に気がついている時と、気がついていない時とでは対応が全く異なるそうだ。相手が気がつけば静に相手は熊笹の中で超スピードで泳ぐように、但し人目には安を見せず全く音もさせず遠ざかる。人と熊が両方遠くから気づいた場合はお互いに対面を避けるのだが。
たまには双方の非難方向が同じでバッタリ屋根の上でご面談などもあるそうだ。
彼の経験はその時はじっと動かず目を見つめあう。時々目を周囲にめぐらし手頃に登って逃げられる木を見つける。それも猿のように木から木へ移ることが出来るような枝の木に登るのだ。熊も追いかけるようにして木を登ってきた。作戦があるのだ。しなる木の枝まで逃げ、次の木に飛び移る。今までつかまってきた枝が体重が無くなるので反動で枝がむちのように飛びはね追ってきた熊は跳ばされた。
地上にたたきつけられた熊君、すぐ立ち直おり勇善と何事もなかったように森に消えたそうだ。
一人山歩きの山中は全く熊には心配しない。作業現場に行く途中も、木の幹を強くたたいたり音を出し人間が入ることを知らせようとする。耳と鼻で常時熊の気配を注意しているという。