店の前のやきとり屋を5年前に当社のテナント仲介で開業しました。親爺は朝8時半に準備にかかる。まもなく齢70を超えるだろう。仕込みが終了し、5時から販売開始、オーナー親爺1人だけ。焼くのにコツがあるらしい。毎日いつも人が行列とまでいかないが3人から10人ぐらいは並ぶ。9時で終了。職業病として焼けた炭を見つめる時間が長いので目をやられるとのこと。
立ちっぱなしで9時までがんばるなあ。売上高も予想がつくが好調なのは確実に伝わってくる。親爺、あんまり稼ぐなよ、命あってのものだねだぞなどと私がからかう。まんざらでもなさそうに笑う顔は自信に満ちたいい顔だ。
先日、会社のハス前なので孫が生意気にやきとり食べたいなどというので2人の孫と並んで待っていたところ若いアンチャン風の人がきて早く焼いてくれなどと親爺をせかす。
アンチャン : 3本焼いてくれよ、急ぐんだから。
親 爺 : …………。
私と孫たちは焼き鳥の煙の中、立って待っている、他のお客も3人ほどいる。
5分ほどたって
アンチャン : 親爺、急いでるんだから早くしてくれねえか。
親爺 : うちは5本以上でないと売らねえんだ。
アンチャン : (むっとして)そんなこといっていいのか。そんなこと言うからこの店はヒマなんだ。
親爺 : 余計なお世話だ。やきとり渡してお金を貰って初めてお客だ。金はおまえのものだが、やきとりは
まだこっちのもんだ。うちはうちのやり方があるんだ。(一心に焼き鳥を焼きながら)気に入らな
きゃよその焼き鳥屋へ行けよ。
アンチャン : キレた様子で生ヤキトリのケー
スを強く手でたたきながらこんな店二度と来るか、と再度強くケースをたたく。
親爺 : 人の家の物をこわすな、パトカー呼ぶぞ、今後店の中に入るな。前の通りも通らせねえといいたい
がそれは仕方がねえから
アンチャン : パトカー呼ぶなら呼んでみろ
親爺 : (携帯でパトカーを呼ぶ振りをする)
アンチャン : (急いで消える)
他の客と私達は大笑い、孫たちも神妙だったがホッとしたようだった。私も一度でいいから憎たらしい厭らしいお客に言ってみたいなあ。
このヤキトリ屋の焼き方は、焼き方が勝負らしく1人のお客の注文を焼き終わらないと次のお客の注文品を焼くことをしない。焼き方で味の良し悪しを決めているのです。
平和な日本の日曜日。